坑内(自然条件・採炭方法)

*本HPの写真・図版等の転載・転用等を固く禁止します。

社内炭砿の自然条件 〕

炭砿名傾斜層厚上下磐の制御松岩の有無ガス発生量石炭の硬さ
容易普通困難普通普通普通
高島
端島
<三菱鉱業セメント(株)総務部社史編纂室、『三菱鉱業社史』、三菱鉱業セメント(株)、昭和51年、718頁>の「表91 社内炭砿の主な自然条件」高島・端島分を掲載
 また、<三菱鉱業セメント(株)高島炭砿史編纂委員会、『高島炭砿史』、三菱鉱業セメント(株)、1989年、341頁>には、端島砿の特性について以下の記載があります。
  • -700mからは60°を越す急傾斜炭層となっている。このため機械化が甚だ困難であり,加えて採掘跡を硬(ボタ)により充塡する全充塡採炭法を採用していたため,充塡硬の供給できる範囲での出炭という大きな制約があった。
  • 石炭の微粉化率が大きく,自然発火性向が強く,ガス湧出量も多く,ガス突出の起りやすい不利な面を有していた。


〔 緩中傾斜層の採炭 (2)厚層の採炭 ⑤端島における空気充填による厚層採炭 〕

昭和40年11月より三ツ瀬区域の全面的採炭を開始した
傾斜は左部においては5~15°の緩傾斜であるが,右部においては35~45°の急傾斜である。
この炭層に対して-295m水準の上一片まではスライシング払を含め最高8段払を実施して,極めて優秀な成績を収めたが,それよりも浅い区域においては,亀裂による海水の浸入増加を防止防止するため,全層のうち炭質が最も良好な部分を4~5段に分けて空気充填を実施し,49年1月の閉山までこの方法が行われた。
端島における空気充填払いの概要は次のとおりである。
イ,充填材料  端島水洗硬,二子水洗硬,端島掘進硬。
 二子水洗硬は二子選炭場より海上約5kmを輸送する。掘進硬はクラッシャーで60mm以下に粉砕して使用する。

<三菱鉱業セメント(株)総務部社史編纂室、『三菱鉱業社史』、731・732頁>より抜粋


〔 急傾斜層の採炭 〕

(1)急傾斜採炭の問題点
三菱鉱業の炭砿のうちで急傾斜層は端島,美唄通洞坑・二坑,茶志内の3炭砿である。急傾斜層採炭の特異性は,緩中傾斜層に比べて自然条件に影響される点が特に大きいことと機械化が困難なことである。
(2)端島における急傾斜厚層採炭
端島の炭層状態は,既に述べた三ツ瀬区域を除いて傾斜約45°であって,上部より一丈層,二尺一尺層,十二尺層,四枚層の4層が接近していて,厚さ7~8mの厚層となり,炭質はいずれも軟弱であるため,沿層坑道においても高落ちし易く,またガス発生量も多くて自然発火が極めて発生し易い炭層である。炭質は国産原料炭のうちで最優良炭であるが,採炭技術的には最も困難な炭層に属する。この炭層に対して,大正8年川浪守三郎が副長として赴任するまでの採炭法は,残柱掘で出炭し・・・(途中略)・・・しかし川浪は磐下坑道方式と持込み充填法による長壁式採炭法を採用し,数年にして全く面目を一新して,昭和16年度において端島の出炭は41万tにも達した。
(3)美唄における急傾斜斜面払
美唄常磐新坑においては,昭和38年から急傾斜(50~60°)の澄川層を対象として斜面を22~25°に偽傾斜に取り,採炭充填並行作業方式を導入して,緩傾斜払に匹敵する大量且つ安定した出炭を目指す斜面払採炭法を確立した(図36)。作業工程は2人1組で上向きに鑿孔し,肩部より逐次深部に移動する。次いで装填,発破,切付け,冠囲い,炭掻きを20~30mごとに順次肩から深に向かって行い,更に発破箇所から20~30m遅れて充填作業が続く。深部まで充填ののち,再び肩部から鑿孔が始まり,同じ工程が繰返される。肩坑道の硬明け場と払内充填箇所との連絡は安全型電話器で行い,払内の炭流しと硬流しには塩化ビニールトラフを使用する。・・・(途中略)・・・なおこの採炭法はその後美唄二坑,端島三ツ瀬区域等にも採用されて好成績を収めた。

<三菱鉱業セメント(株)総務部社史編纂室、『三菱鉱業社史』、733頁>より抜粋


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