有家町 五蔵巡り(南島原市)

平成20年2月。
テレビを見ていたら、南島原市有家町で五蔵巡りのイベントがあるという。
これまで有家町は通り過ぎるだけで、立ち寄ったことはなかった。
とても気になったので、翌日行くことにした。

諫早市から車で、約1時間30分。
南島原市有家支所の駐車場に車を停めて、旗を目印に蔵を目指す。

蔵は、5つあり、それぞれに番号が付いている。
今回は、歩いて行ける4つの蔵を回ることにした。

まずは、四の蔵に当たる「ヤマコメ醸造」。
味噌と醤油の蔵だ。
建物の中は、多くの人で賑わっていた。
お座敷に上がり、立派な庭を拝見することが出来た。


次の三の蔵は、喜代屋商店。
ここも、味噌と醤油の蔵だ。
ここでは、醤油アイスクリームが売られている。
食べてみると、キャラメルのような味がして、意外と美味しかった。

三の蔵の前の道は、温泉神社の参道である。
参道沿いには、時代を感じさせる大きな建物があり、町並みに重厚感を与えている。

実は、この大きな建物は、二の蔵である浦川酒造のものである。
入り口は、反対側にある。
残念ながら、この建物の内部を見ることは出来ない。

蔵巡りとはいえ、見られない場所があっても良いではないか。
それは、それで伝統やこだわりが残っているということ。
全てを見せる必要はない。


温泉神社。
神社の背後には、雲仙岳がそびえている。



ここは、雲仙の温泉神社の分社であるとのこと。
境内は広く、巨木が立っている。
社殿の裏には、宝篋塔が集められていた。

島原から見る雲仙、天草から見る雲仙、それぞれに姿は異なるが、有家町から見る雲仙は、壮麗で神秘的に見える。
蔵巡りをしながら、何度も雲仙に目を奪われた。
ここから見る雲仙は、とても美しい。

ここは、二の蔵である浦川酒造。
「一鶴」「時代の酒」という酒を造っている。

酒造場の敷地の広大さに、まず驚かされる。
前述のとおり、蔵は見られないが、立派な座敷や庭園を見ることが出来る。


座敷には、雛人形が飾られていた。
この日は飾られていなかったが、幽霊の掛け軸もあるそうだ。
そのほか、北村西望の彫像も何気に飾ってあるので、見逃さないように。

広大で美しい日本庭園。
座敷から眺めると、時間が経つのを忘れそうだ。

小さな雛人形もたくさん飾られていた。

広い座敷では、たまにコンサートも開かれるとのこと。
一度、お酒を飲みながら、ゆっくりと聞いてみたいものだ。



「時代の酒」と「奈良漬」を購入した。
後日、家で飲んだところ、とても美味しかった。
薄い青色をした瓶も、お洒落でインテリアとして使えそうだ。
また「奈良漬」も味が濃く、大変美味であった。

試飲を楽しむ人を羨ましく見ながら、二の蔵を後にする。
次は、少し場所が離れた壱の蔵だ。


壱の蔵へ向かう途中にある専念寺。
浄土真宗の寺院だ。
島原の乱後に、キリスト教に代わる信仰の対象として、建立された。
境内は広く、寺院としての格式も高いそうだ。


日本一の槙の木だったが、台風で折れてしまった。
折れた跡が、痛々しい。

壱の蔵である吉田屋
酒蔵である。

広大な土地に重厚な建物が並び、見る者を圧倒している。
どんな蔵なのか、期待に胸が膨らむ。

中も外も多くの人で賑わっている。

ここでは、「萬勝」「はねぎ搾り」という酒が造られている。
私の代わりに試飲をした妻の好みで「はねぎ搾り」を購入した。

お酒も美味しいが、実は「甘酒」がとても美味しい。
総合栄養ドリンクとして見直されている「甘酒」。
健康のことも考えて、数本購入した。

女性は、美容のためにも飲んでおきたいところ。

ここでは、お酒のほかに可愛い雑貨類も販売している。
売り場は見せる工夫がされていて、とても楽しい。
お客さんもつい買ってしまう。

売り場の横に、八千代という喫茶店が併設されている。
金・土・日の開店。
ここでは水出しコーヒーを、ぜひ飲んで欲しい。
甘酒ぜんざいなどデザート類も美味しそうだ。

イベント以外のときも訪れてみたいと思う。
庭を眺めながら、ゆっくりとした時間を過ごすことが出来そうだ。


蔵では、はねぎ搾りの工程を見ることが出来る。
はねぎ搾りは、全国でも珍しいとのこと。
手間がかかる分、すっきりとした味になるそうだ。



たまには、車から降りて歩いてみよう。
大きな道の一本裏には、いろんな発見があるはずだ。
その地域の文化や歴史を、より深く認識することが出来る。
日常の生活にも深みが出てくるのではないだろうか。
そう思うようになったのは、有家町を訪れてからだ。

有家町がきっかけとなり、そういう場所を探すようになった。
同じものを見て、感動する人もいれば、何も感じない人もいる。
感受性の問題ではあるが、常に敏感でありたいと思う。

有家町の人達は、蔵がある風景を貴重な観光資源だと気づいた。
蔵が有家町の宝だと気づいた。素晴らしいことだと思う。

後は、蔵をどう活用するか。
蔵という素材に特化することで、蔵に魅力を感じる人が多く訪れる。
中途半端なイメージ作りでは、かえって悪い印象を与えてしまう。
蔵に興味がない人を無理に振り向かせる必要はない。
ターゲットを絞り、徹底したイメージづくりをすることが大事だ。

また、町歩きには、ウォーキングの効果がある。
そして、ここでは健康に良い甘酒や味噌が造られ、造った人の顔を見て、話を聞き、そのうえで安心して購入することができる。
健康になりたい人は、ここを訪れると良い。
商品を気に入れば、イベントに関係なく訪れる人も増えるだろう。
そのためには、商品の良さを伝える努力が必要だ。

積極的に活動している観光地は、微力ながら応援したくなる。
蔵の町にふさわしい観光地になってもらいたいものだ

今日から有家町は通り道から寄り道する場所となった。

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