FFTソフトの使い方

B&W・SP(スピーカ)を改造する際、PC(パソコン)を使ったFFTソフトが大変役に立ちました。計測、パソコンの専門家ではありませんので詳しい説明はできませんが、SP周波数測定時の参考にして頂けると幸いです。また簡易的ではありますがSPインピーダンスの傾向を知ることができるので、SP・BOXのバスレフダクト調整に役立つと思います。

■FFT(高速フーリエ変換)とは?

信号波形はFFTを用いると基本波、基本波×2次、基本波×3次、...、基本波×n次の周波数(サイン波)に分けることができます(構成している周波数成分が分かる)。音響、振動解析で良く用いられる手法です。

たとえば歪みのない1KHzのサイン波をFFTにかけると、1KHzにピークが現れます。(下図参照)

(詳しくは専門書を見て下さい)

■用意するもの

PC(DOS/V)

高速CPUが望ましいのですが、私のPentium133MHzでも十分に測定ができます。ノート、デスクトップどちらでも可

サウンドカード

最近のPCは標準で付いていると思います。
私の古いPCは半二重式で録音・再生が同時にできません、PCIバスに全二重カードを付けました。
PCをFFT音源(ホワイトノイズ)に使う場合、Line−OutにSP/Lineの切替があるものはLINEに設定します

マイク

広帯域の全指向性(無指向性)マイクが望ましいのですが、パソコンに付属しているマイクでも十分使えます。(画像左端)

生録で使っていた単一指向性マイク(画像上3本)も立派に使えました。
画像下端のマイクはテクニクスの音場測定器SH−8000に付属のもので広帯域・全指向性(マイク特性を調べる音源がないので詳しくはわかりませんが)
FFTソフト

フリーソフト WaveSpectraを使いました。

上級者向けにシェアウエア  サウンドモニターFFT Waveがあります(試用期間は一ヶ月)

FFT音源

ホワイトノイズ発生にフリーソフト WaveGeneを使います。

サイン波、ホワイトノイズ等の波形が出力できます

スイープトーンが入ったCD

(あると便利)

スイープトーンで計ると細かな凹凸が分かります。

スイープトーンが入っているオーディオチェックCDを使っています

マイクスタンド

マイクを手で持って測定できますがマイクスタンド、カメラ三脚があると便利です

検討事項
FFT音源にはピンクノイズを使うのが正しいのでしょうが、ピンクノイズをFFTにかけると周波数が右下がりとなってしまいます。
一方ホワイトノイズをFFTにかけると右肩が若干盛り上がりますがほぼフラットとなります。よって音源にはホワイトノイズを使う事にしました。
■マイクの接続
PCのサウンドI/Oはミニプラグ仕様となっています。PC付属マイクはそのまま接続できますが、標準のマイクプラグは接続できませんので変換器を作りました。
変換器回路図  

■WaveSpectra(FFT)の使い方
同梱のWs.txtに詳細が載っています、ここでは必要と思われる箇所のみの説明とします。

(1)表示領域
画面上側 : 波形表示
画面下側 : FFT表示
表示領域の変更 : 波形〜FFT表示境界線をマウス右クリックしたまま上下すると、表示領域が変わります。片方のみ表示も可能です。
(2)各種設定
画面右上のスパナマークをクリックすると設定画面を表示します。

Wave
 波形表示の設定
Spectrum
 FFT表示の縦軸目盛、レンジ等を設定、縦軸はdB横軸はLogにチェックを入れます。シフト(dB)で縦軸表示位置が変わります
FFT
 サンプルデータ数を指定。データ数を多くすると細かな解析ができますが、CPU負荷が高くなります(低域の分解能は上がる)。低速PCだと高域特性が悪くなります。
再生/録音
 データフォーマットを定義します。CDフォーマット(44100S/S、16ビット)で良いでしょう。
     録音モードサウンドデバイスからの入力のみに設定します。
表示色
 画面の色を変更できます。(以降の説明では表示色をセット3にしています)
(3)操作
画面左上のボタンで操作を行います。
  録音(入力)
 ■ ストップ
 U ポーズ
■WaveGene(PC音源)の使い方
同梱のWg.txtに詳細が載っています、ここでも必要と思われる箇所のみの説明とします。

1)表示領域
画面上側 : 発生信号の設定
画面下側 : 波形表示
表示領域の変更 : ウインドウの縦サイズをマウスで変更すると、波形表示のON/OFFができます。
2)各種設定
今回はWave1のみ使用し、Wave2〜3はOFFとします。
■ミキサーの設定
Windowsのコントロールパネルからミキサーを立ち上げます。ドライバーを提供しているメーカによって画面が異なる場合もありますが、基本機能は同じです。

 

必要に応じ、設定を行いますが、上図はWaveGenで発生した信号をWaveSpectraで観測する場合の設定です。
スライドボリュームが多数並んで戸惑いますが、実際にやってみると簡単です。
■動作確認
WaveGeneでホワイトノイズを発生させ、WaveSpectraで観測します。下図が観測画面です。
(Peakボタンを押してピークホールドしています)

■SP周波数を計ってみよう!
サウンドカードのLine−Outをアンプに繋ぎ、WaveGenのホワイトノイズをSPで再生、WaveSpectraで観測してみましょう。
SPはB&W・CDM7NT、マイクはSPから1m離しています。
マイク、アンプのボリュームで表示位置を調整します。下図はピークホールドしたまま一分位待った結果です。ホワイトノイズを使っているので少し右肩上がりとなっています。

次はCDのスイープ信号で20〜20kHzを90秒かけてスイープした時の状態です。

ホワイトノイズと比較するとよく似ていますが、ホワイトノイズでは見えなかった400Hz前後のディップが現れています。
マイクがSPより数十cm離れると部屋の影響が出てきますが、大凡のSP素性が見えてくると思います。ウーハ、ツィータ単体を鳴らしネットワークのクロスオーバ付近の特性を確認する事も可能です。ユニット単体の特性を計る場合、マイク〜SPの距離はかなり近くても良い様です。
SPを内側に向け部屋の影響が変化することも確認できました。
■SPインピーダンスの計り方
インピーダンスの絶対値(何Ωあるか)は分かりませんが相対値が分かります。SP・BOXのバスレフダクトの調整に使えそうです。
接続図
CDスイープトーンを使ってB&WのCDM7NTを計ってみました。SP改造でインピーダンス補正を行っており高域のインピーダンス上昇が押さえられています。

 
■音源の使い分け
『新版 スピーカ&エンクロージャー百科(誠文堂新光社)』の中に以下の説明(抜粋)がありました。
ホワイトノイズはデジタル計測で伝達関数やインピーダンス特性の測定に使う
ホワイトノイズに−3dB/oct.のフィルターをかけたものをピンクノイズといい、オクターブバンド測定の信号源として使用する
理論上ホワイトノイズのスペクトラムはフラットなので、FFT音源として使って良いようです。
 
2001/1/14 create t.shiroyama
2001/2/25 音源の使い分け追加