スーパーウーハー用Nautilus箱の製作
■経緯
使用しているスピーカNautilus804(3way)はネットワークを18dB/octから12dB/octに改造、各SPユニットのfo・高域インピーダンス補正を行いバスレフポートにスポンジを詰め密閉としています。部屋の影響を受け概ね30Hzまでフラットに低域が延びていますが、量感や雰囲気が不足します。そこでスーパーウーハー付加(4way化)のためスーパーW箱の製作となりました。
■構想
4way化にあたりスーパーWは専用アンプで駆動するマルチch化を図ります。チャンネルデバイダは牧原さんに設計をお願いしました。スーパーWは密閉箱とするので低域がダラ下がり、チャンネルデバイダにローブースト回路を設け低域再生をフラットな特性とします(この方法は西原さんシステムで実証済み)。
改造Nautilus804(能率89dB、インピーダンス約4Ω)は音の濁り〜歪感が大変少なくCDP、アンプの音をストレートに出します。肝心のW箱ですが曲面側面+補強を多用したNautilus804の音に慣れると、一般的な直方体箱の音は耐えがたい音です。直方体箱は箱内部が全て平行なので反射や共振で音の濁りがあり、濁った音がSPコーン紙を通り抜け耳へと達します。
そこでNautilus系と同じ曲面側板+マトリクス構造(補強材を格子状に入れる)で箱を作ることにしました。B&W(英国)のホームページや50ページ位に及ぶ製品カタログを穴の開く位眺め構想を練り上げました。上手く製作できるか小さな箱で試作を行い、曲面側板も2.5o厚ベニア板を積層して製作できることが分かり一安心。Nautilus801、802は側板板厚が35o、何処まで積層して厚くするか悩ましいところです。
箱図面はこちら、あれこれ悩んだ末の部品図はこちら
部品図まで落とすと設計の良否、勘違いが見えてきます。
板材の接合面はトリマで溝を彫り簡易ホゾ組みとし、マトリクス構造の補強材は本家B&Wに習って肉抜きを行います。箱容積は約100Lで西原さんにシミュレーションを行って頂きQtc:0.62を得ました。本当は200L欲しいのですが、製作した箱を部屋へ持ちこむ際の苦労を考えると100Lが限界です。補強材を多用するのでかなりの重量となりそうです。Nautilus804:104kg、Nautilus802:70kg、Nautilus803:30kg、Nautilus804:24kg、自作箱容積を考えるとNautilus803.5と言ったところでしょうか。
■補強材の切り出し
先ずは内部補強材の切り出しを行います。ホームセンターで12o厚コンパネ3枚を直線カットしてもらいました。パネルソーでカットするので精度良く板の切り出しができます。カット後の板材はかなり重く完成重量はかなりのものになりそうで、完成箱を部屋へ搬入する際の大変さが予想されます。
方眼紙+ケント紙で水平補強材の型紙を作りました。方眼紙桝目を数え箱容量を計算すると120L以上、軽量化のため箱高さを少し低くしましたがSP、補強材を除く箱容量は100L確保できました。 => 図面に反映済み
水平補強材に型紙を載せ型取りを行いジグソーでカットし、格子組みの溝はトリマで彫っています。多少の誤差を吸収できるよう、溝は0.5〜1mm程広くしています。トリマの溝が真っ直ぐになるよう井型に組んだ木製定規を当て加工していますが、使い勝手〜加工精度とも良好です。
板材カットに誤りが無いか仮組みした状態です。補強材の肉抜きは未だ行っていませんがズッシリと重く頼もしく感じます。少しNautilus箱の雰囲気が出てきました。
■補強材の肉抜き
補強材にマーキングを施しますが時間が掛かる作業です。R部分は試しに木工用ホールソーで抜きましたが時間が掛かり、全てジグソー加工しました。抜く個所は約100個、予想以上に大変でした。抜いたところはトリマでRを付けて不要な反射を押さえています。
再度仮組みして作業の確認です、本家B&Wのマトリクス構造に似てきました。
■バッフル板等の切り出し
当初板厚を21〜25oで考えていましたがホームセンターにある21o厚ベニア板の状態が悪く、12oベニア板を2枚貼り合わせ24oとしました。箱側面が曲面なので、バッフル板と裏板端は斜めにカットする必要があります。定規をあて電動丸ノコで斜めに切り落としました。
接合部は全てホゾ組みするのでトリマで溝を彫っています。SPを強固に固定できるようバッフル板に鬼目ナットを埋め込みました。(鬼目ナットはホームセンターに有り)
一通り加工が終ったところで再度仮組み、加工の誤りは無く一部はめ合いが渋く少し削りこみました。バッフル板〜裏板は縦方向を長めに切り出し、側板を貼った後に余分な部分を切り取る予定です。板材が揃ってくるとズッシリと重く運搬は大丈夫かな?と少し不安でもあります。
作業の峠は越えた様で少しホッとしています。
■側板貼付
側板を貼り付けると補強材が邪魔になり吸音材を入れることができない部分があるので事前に吸音材を入れておきます。吸音材は水槽用のフィルタを使いました。
吸音材を入れ終わると側板の貼り付けです。側板は2.5o厚のベニア板ですが、カーブが緩やかなので簡単に曲がります。先ずはベルトで締め上げゴムバンドで更に締めて密着させ、根気良く仮釘で固定します。ベルト、ゴムバンドはホームセンターで調達、ゴムバンドはフックを付け使い勝手を良くしています。
両側面1枚貼ったところで箱を叩くとコンコンと尾を引かず短い音、四角箱のボンボンと尾を引く音とは明らかに異なる音です。
側板は接合面両方に接着剤を薄く塗りますが、先ず雑巾で表面を湿らせヘラで接着剤を薄く延ばします。試しに2枚同時に貼り合わせましたが上手く張ることができました。2枚同時に貼る際はゴムバンドを8本使っています。側板は重量の兼ね合いで9枚、22.5o厚となるまで貼り合わせ、30kg位あるでしょうかズッシリと重さを感じます。
SP開口部付近の側板を叩くと少し響くので内部に補強材を追加しています。
余分な側板は手引きノコで大凡切り取り、ルータを使って各面と面一となるように削り込みました。また天板は見栄え良くするためにシナベニアを貼っています。更に天板と底板の周はトリマでスプーンと呼ばれる凹加工を施しました。
■仕上げ
先ずは目止めと着色を兼ね赤砥粉を水に溶き雑巾で塗り付け、乾燥後に乾いた雑巾で余分な砥粉を落とします。次にクリアラッカーを塗りサンダーで木の毛羽立ちを軽く取り、艶消しのウレタン・クリアを3回塗って仕上ました。艶消しにすると木部加工の粗を隠すことができます。ウレタン塗料は乾きが遅い分(乾燥までに6時間位)刷毛目も目立たず皮膜も丈夫です。
箱試作から4ヶ月!手間を食う箱でした。次はSPのfo/高域インピーダンス補正が控えています。
■インピーダンス補正
先ずはWを取り付け音出しです。Wはfoインピーダンス補正用に使う0.1Hのコイルをシリーズに繋ぎ(−6dB/oct)Nautilus804とパラに接続しています。側板貼付け時に上下に詰めた僅かな吸音材ですが、側板が曲面で裏板面積が少ないので中低域の濁った響きがありません。和太鼓やJAZZウッドベース、キックドラム等低域が多めに入ったCDを再生しても箱の振動は僅かです、当初の目論見通りの結果です。この状態でも十分に鑑賞できるレベルです。
強力な30PL100にNautilus804が負けるのではないかと心配していましたが、エネルギー感は上手く揃っています。暫くW単体で鳴らしましたが全域に渡り低歪です、大口径Wにありがちな中域のピークが全くありません、実に上手くコントロールされています。
手芸店で買ってきたポリエステル綿を箱内に軽く充填し、Wのインピーダンスを測りExcelでインピーダンス補正シミュレーションを行ないました。foは36〜37Hz位、吸音材を充填する前と比較するとfoが僅かに下がりインピーダンスは2/3程となりました。吸音材調整でWの取り外しを行ないますが、重量が1本15kgもありシンドイところもあります。
foインピーダンス補正のLは大きく高価となりますが、今回は安価な電源用チョークコイル(0.1H、5A)を使って見ました。画像は箱組み込み前のテスト風景です。SPと並列に付け外しを行なうと音の変化が良く分かります。foインピーダンス補正を行なうと音がギュッと締まってきます。
Nautilus804を4way化するチャンネルデバイダができたので周波数特性を測りました。チャンデバにローブースト回路が組み込まれているので20Hzまで再生できる筈です。左画像がNautilus箱単体ですが、部屋奥行きが6m位あるので28Hz付近での共振があります。右画像はNautilus箱+Nautilus804を組み合わせたものですが。低域は部屋の影響で暴れていますが、計画通り20Hz〜20KHzが大凡フラットになることが分かりました。
以前から気になっていたのですが周波数測定に使っている音場測定器マイクf特は低域が下がっている様です。また発振器+ミリバル+マイクでf特を測ると、TWは20KHz以上高域が延びています。
2002.12.01 create t.shiroyama
update 2002.12.04、12.08、12.22、
2003.1.19、2.16、3.1、3.23、4.6、4.30、5.3