スピーカ改造

 

■経緯

自宅建て替えで2wayホーンから欧州ミニSP(スピーカ)に変更、スケール感に不満が残りつつ過ごしていました。しかし最近の欧州SPは大好きなJAZZが良く鳴ります。

当初欧州SPユニットを使い3wayで構築しようと考えていましたが、試聴会でB&W・Nautilus801を聴き一目惚れ(一聴惚れ)。B&WのSPシステムを購入しネットワークを改造することにしました。価格はNautilus801の1/10ですが何処まで改良できるか楽しみです。

メーカー製品を改造するとメーカ保証が受けられません。個人の責任で改造します。

■SP到着

2000年12月発売予定のB&W・CDM7NTが10月末に届きました。何の準備もやっておらず、先ずはSPの中身拝見としました。

左:常用のアコースティックラボ・ボレロ。ウーハはポリグラス製と思われ、JAZZも良く鳴ります。超三アンプで低域の量感が増しホーンTW(ツィータ)を乗せました。TWは懐かしいコーラル製で1インチドライバ並の大きさです。スタンドはTAOC。

右:購入したB&W・CDM7NT。ユニット、箱の作りが良いようで、ネットワーク改造無しで十分JAZZが楽しめます。TAOCスタンドの底板+スパイクを使いSPを乗せています。

W(ウーハ)、MID(ミッド)とも公称165o、マグネット径はW=110o、MID=100o。ロングボイスコイルで作りが良く、パワーも入りそうです。(写真はMID)

★実際はMID(BASS)+TWの2way+スーパW構成となっています。

左:W+MIDネットワーク、各6dB/Oct

右:TWネットワーク、18dB/Octでインピーダンス低下防止と思われる抵抗が入口に付いています。

箱内部は自作できそうにもない格子状の補強が入っています。マトリクス構造の簡易版と言えそうです。W、MIDの仕切板は斜めです。

箱、ユニットを眺めるとコストパフォーマンスは高そうです。

■インピーダンス特性(オリジナル)+インピーダンス補正計算

最初は

FFTサウンドモニタで簡易インピーダンス特性を計りましたが、今回は真面目に計りました。オリジナルNWにはインピーダンス補正回路は付いていません。

測定結果をExcelでプロットし高域補正をシミュレーション、TWは共振補正もシミュレーションしました。

補正LCRの値を入力すると補正結果をExcelで表示できるように作りました。

フルレンジ・インピーダンス特性

高域でインピーダンスが3Ωまで下がります。アンプには辛い値です。

W、MIDともバスレフポート解放だったと思います。(うろ覚え)

Wインピーダンス特性

高域補正でフラット化できそうです。
補正R=10Ω、C=4.7μF

MIDインピーダンス特性
補正前のインピーダンスは10KHzまでフラット、優秀なユニットのようです。

バスレフポートを塞いだ状態が好みの音が出るので、この状態でインピーダンスを計りました。

補正R=4.7Ω、C=0.47μF

共振補正はコイル(=部品代)が巨大、後回しです。

TWインピーダンス補正

TWのみ共振補正を行いました。

共振補正でインピーダンスをフラットにできますが2Ωまで下がり、程々の補正としました。

高域補正R=6Ω、C=0.47μF

共振補正 L=1mH、R=7.5Ω、C=11μF(22μF100V電解コンデンサシリーズ接続を想定)

★下はNW製作後の実測値です。若干の相違はありますが、共振補正も上手く行われているようです。

■周波数特性(オリジナル)

音場測定器はデータ取りが面倒なので、FFT+パソコン付属のマイクで計りました。

マイク:MID中央から50cm離す

分解能:5.38Hz

1/12オクターブ表示

パソコンが遅いので高域下降

30Hz付近から音が出ます

マイク:MID中央から50cm離す

分解能:5.38Hz

1/3オクターブ表示

マイク:MID・TW中央から50cm離す

分解能:10.8Hz

1/3オクターブ表示

マイクをTW正面5cmで計ると10kHz付近から急降下、安物マイクの限界だと思います。1/3オクターブで低〜中域が10dBに収まっており、部屋の状態はそこそこ良いようです。

■TWネットワーク製作

ネットワーク製作にあたり手作りアンプの会

牧原さんより色々とご教授頂きました、有り難うございます。

Excelシミュレーション結果を基にネットワークを作りました。箱は補強が多数入っており、ネットワーク基板は小さく作りました。基板はプリント基板の銅箔をカッターで切り、不要部分を剥がして作りました。

ネットワーク回路図はこちら

クロスオーバは3Ω4KHZ、周波数が高いので部品は比較的小型で間に合います。高級パーツを奮発したかったのですが、基板大きさの制約があり汎用部品を使いました。Cは6.8μFのみI.T.ElectronicのAUDYN−CAP(金属蒸着)、小容量ははソーレンのMKP−FC、中容量はニチコン・ミューズ黒(海神無線扱い)を使っています。ハイパスLはフォステクス・0.18μFの空芯コイルを解いて使用(メーカカタログに改造方法あり)、共振補正Lはコイズミ無線オリジナルのコア入り1mH、抵抗は汎用のセメント抵抗を使いました。何れのLもエポキシ接着剤で固めました。

殆どのパーツはコイズミ無線の通販で入手可能です。

チューニングで基板を外す可能性があるので、端子台を接着剤で付けました。

■W、MIDネットワーク

箱からNWを取り外します。SP穴が約140o、箱中間に補強もあり、作業は難航しました。私は手がヤワなので良かったのですが、大きな手の持ち主には辛い作業になると思います。またNWに繋がっている線が短く、箱の中にはんだごてを突っ込み線を外しやっとNW基板を取り出しました。改造後のNW収納も大変でした。

オリジナルNW(各コイル1個の6dB/Oct)基板を使用し、高域補正CRを追加しました。全部品はエポキシ接着剤で固めました。

吸音材、NW基板に少し接着剤が付いていました。箱組立時に併せて吸音材、NW基板を組み付けたようにも思えます。

■改造NWの試聴

オリジナルNWと比較するとベールを1枚剥いだようにクリア、明快なメリハリのある音に変わりました。若干の改善があるかなと思いつつの改造でした、が、ん〜っ驚きです、ここまで変わるとは想像してもいませんでした。

テストCDのスイープ信号をかけましたがNWのクロスオーバ付近の問題はなさそうです。JAZZが更に良く鳴ります、オンマイク録音の現代音楽も妙に生々しいです。

TWがメタルドームで慣らしにはもう暫く時間が必要です。後は時間を掛けチューニングします。

■チューニング1

TWが少しうるさく感じます。またFFT+パソコンで周波数特性を計るとクロスオーバ周波数付近でのディップがありました。TWの高域インピーダンス補正Cを若干増やし、ハイパスCも同様に増やしました。以下の図がチューニング後の周波数特性です。FFTサウンドモニタはポンコツPCには少々重いので、WaveSpectraと言うフリーソフトを使いました。また細かな凹凸を取るため、FFT側で10回のアベレージングを行っています。

マイク位置はMID〜TWの中心、50cm離しました。赤い線が周波数特性です、CDスィープ信号をFFT側でホールドしたものです。灰色はハムの影響です。

フラットな特性となりました、クロスオーバ付近のディップも無くなりました。

■測定1 (MIDポートはふさぐ)

暫く聴いていましたが、少し不満が出てきました。シンバルにスティックがあたるコツン、ボーカルの子音、リップノイズが旨く出ません。

そこでユニット毎の周波数特性を計りました。TWのハイパスCは7.16μF、TW高域補正Cは0.68μFです。SP端子がバイワイヤリング式なのが測定に好都合でした。今回のFFTはアベレージングを行っていません。上図はMID、下図はTWの周波数特性でマイクは20cm離しました。

図を見るとクロスオーバ付近のオーバラップが多すぎるのかもしれません。

■コーヒーブレイク

NW定数の微量変更で第一関門のチェンバロCDは無難に鳴るようになりました。現代音楽のステーィブライヒ+クロノスカルテットも良し、数少ないクラッシックCDもそこそこ聞けます。しかしJAZZのゴツン、ゴリゴリがでません。

SPより20cm離れた周波数特性は相変わらずフラットですが、部屋を含めた特性を計ることにしました。リスニングポジションはSPから2m位の距離ですが、マイクケーブルが短いのでSPから1mの特性を計りました。

上図が側壁クローゼット扉を閉めた時、中図はクローゼット扉を半開(屏風の凹凸と同じ形状にする)にした状態です。中域特性が大きく変わります。クローゼット扉は何らかの対策が必要です。下図が1/3オクターブ・スペクトル表示(クローゼット扉閉)で凹凸が10dB内に収まっていました、一安心です。

また手作りアンプの会

牧原さんより伺った内容を基に、現用のビクター社アンプを改造しました。改造と言っても3箇所/chのバイアス回路に47μFの電解コンデンサ(ニチコン・ミューズ緑)を追加したのみですが。改造でTWの騒がしさが改善されました。

ついでに6CA7超三アンプも繋いでみました。出力トランスが小さく汎用品であり、低域が寂しく聞こえます。また音全体が平面的です。推測ですがW、MID、TWともインピーダンス補正が利いて、超三アンプの電流駆動が生かされなかった様です。少し心配になりボレロSPに超三アンプを繋ぐと元気良い音がでました。

◇SPパッキン

何度もSPを取り外しているとパッキンが切れそうになります。所々薄手の両面テープで箱〜パッキンを張り付けると大丈夫です。

◇MIDイコライザ

ユニット中央に砲弾状の黒いイコライザが付いています。プラスチック製で鳴きが気になるので、内部にエポキシ接着剤を充填してみました。容積が結構あるので、SUS製ビス、ナットを詰め接着剤を流し込みました。

■測定2 (MIDポート開)

MIDはバスレフポートをふさいでチューニングしていました。試しにバスレフポートを解放して聴くと中〜高域がうるさいようです。

周波数特性を計ると3〜5KHzが盛り上がっています、“■測定1”特性と比較すると違いが良く分かります。バスレフにすると中〜高域の音圧が上昇しています。騒がしくはありますが、サックス、シンバル共に元気な音が出ます。MIDの盛り上がりはNWのインピーダンス補正で平坦化できそうですが、面倒なのでMIDポート閉でチューニングを続けます。

■チューニング2

SPも慣らしが進んだ様ですがTWが少々うるさく周波数特性を計ったところ、3〜5KHzが少し盛り上がっています。MID単体での特性も計りましたが以前計った特性と変わりがありません。TW単体の特性を計るとクロス付近の肩が鋭角となっており、TW低域の音圧が上がった様です。

  

★教訓 : SP改造は慣らしが終わった後に実施すべし!!! (失敗でした)
ハイパスCを少し減らしクロス周波数を4KHz=>4.2KHz位に変更すると、3〜5KHzの盛り上がりが平坦となりました。下図が測定結果です。
また左右SPを内側に10°位向けて計りました。800〜2KHz位の凹凸が少し小さくなっており、内側に向けた成果かな?と思います。

■まとめ

FFTによる周波数測定もそろそろ限界に来た様で、後は音楽を聴きながらのチューニングです。

改造のターゲットとなったB&W・CDM7NTは、前機種から大幅な改良が計られています。箱の補強で数kg重量アップ、SPユニットはカタログを見る限りノーチラスと同じ様です(フレーム無塗装等コストダウンは計られていますが)。ユニット単体の周波数特性は驚くほどフラット、パワーもガンガンン入ります、音の抜けもなかなかのものです。

ホーンSPで無いとJAZZは無理かと思っていましたが十分満足できます。SP口径が小さいので風圧、迫力は劣りますが、質感は大変良く、シンバルのコツン、ピアノの響きはなかなかリアルです。別途テクニクス音場測定器で周波数を計ると30〜40Hz位から音が出ています。

B&Wを含め現代欧州SPは昔名を馳せたSP群とは明らかに異なる鳴りです、音の解釈が全く異なります。クラッシックも良く鳴ります(当然ですが)、最近はFMチューナを繋ぎNHK・FMをBGMに流していますが結構な音です。

後はアンプが問題です、十分なドライブ能力が無いとB&Wが鳴らない(現状不満)。製作中のSATRI−ICアンプの完成を待って細かなブラッシュアップを計ります。

 

長い?道のり履歴

2000.11.4 着手 t.shiroyama、以下update

2000年 11.5、12.2、12.13、17、19、12.21、12.24、12.29

2001年 1.2、1.9