Nautilus804改造

■経緯

B&WのCDM7NT(ネットワーク改造品)スピーカを使っていましたが、グレードアップのため上位機種のNautilus804を購入しました。
これもネットワークを改造してより良い音を目指します。
メーカー製品を改造するとメーカ保証が受けられません。個人の責任で改造します。

■SP到着

今回も先ずはSP拝見としました。

  



TW : 25oメタルドーム

MID : 150oケブラーコーン、外周にロール状のエッジがありません。

W : 165oペーパー/ケブラーコーン(2発)
     ドーム状のキャップ(ケブラー)が貼り付いています、
     音源が前に出るのでリニアフェーズを意識?


上から見ると曲面形状が良く分かります。








内部はマトリクス(格子状)構造で箱に起因する色付けを排除しています。
↓はカタログから引用しました。

背面の丸い金具はMID固定金具です。MIDはバッフル面で固定されていません。バッフル振動を嫌っての固定方法の様です。(MID〜バッフル面はクッション材でフローティング)

箱の仕上げも大変良く満足です。側面ツキ板は1枚物で丸く貼っています。
幅238o、奥行きは344oありますが曲面が多いのでかなり細く見えます。

トップのNautilusツィータも魅惑的な外観!音が出なくても満足 ^^;
  WBTスピーカターミナル、慣れないと少し使い勝手が悪いです。

■購入直後の特性

周波数特性を計ってみました。購入直後なので真の特性とは言えませんが、大凡の傾向が掴めます。マイク位置はMID〜TWの中間、低域の凹凸は部屋の影響の外、ダブルWの干渉?
低域は思いの外延びています、市販の中型スーパーW並。CDM7NTはエージングが進むと各ユニットの周波数特性が概ねフラット、Nautilus804もフラットになると思います。

 

少し音も馴染んできたようで過渡特性を計ってみました。計り方はPCでスピーカ過渡特性を計るを参照して下さい。マイクはスピーカから数cm離しています、マイクを離し過ぎると細かな波形が見えなくなります。
右側画像は1kHzのバースト波をFFTにかけたもので、広帯域に渡り周波数が広がっています。

 

トーンバースト波は 3波ON/4波OFFの繰り返しです。信号がOFFとなっても1波以上余分に振動していますが、以前測ったブックシェルフSP、ミニSP、小口径フルレンジSPと比べると素直に減衰しています。
Nautilus804購入時に付いていたB&WのPRビデオ(DVD)を見ると、2種類のレーザ変位計(ドップラー、干渉計)でコーン紙の過渡特性を測っています。1o精度で変位が分かるそうです。コンピュータ・シミュレーションと併せ解析も行っていました。
ネットワーク改造〜インピーダンス補正でどう変わるか楽しみです。

   
   

■ネットワークの改造
ネットワーク改造に伴いSP中身を拝見です。

  Wを外したところ、マトリクス構造が良く分かります

フィルムコンデンサはφ50〜60o程あります、ド迫力です
Wはロングボイスコイル、リード線が直接端子に繋がっています
CDM7NTと同じです

CDM7NTのSP固定ネジは木ネジ4本、Nautilus804は6角穴付ボルト8本で強固に固定されています。フレームは共通の様です。

TWの外観は同じですが中身が少し異なっています。

MID&Wキャップはケブラーコーン、指で弾くとカサカサと乾いた音で余分な響きがありません。紙、ポリプロピレンのやや鈍い尾を引く音と対照的です。
MIDはクッション材でバッフル板からフローティング、
マグネット側にMID固定用のシャフトが見えます。
シャフトは背面から固定、ここでもフローティングされています。

ネットワークはチューニングのプロ・ロマネスク牧原さんに教えて頂いたマル秘定数で改造しました。18dB/Oct=>12dB/Octに変更し高域インピーダンス補正を施したものです。
改造前は穏やかでやや中〜低域が膨らんだ音でしたが、改造後は激変!...チェンバロの引っかく音、倍音、余韻が驚く程自然です。1ヶ月程前にオーケストラを聴き、会場で買ったCDをかけるとフワ〜ッとした感じ(空気感、ホールトーン?)が聞こえます、待ち望んでいた音です。かなり生に迫ってきたようで、暫くはコンサートに通い生の音を覚えるつもりです。
JAZZもドラムスの皮の音、シンバル、かなり良い具合です。sax、ビブラホン、ピアノ何でもOK、男性ボーカルの胴鳴りも膨らまず自然です。
CDM7NT改造品と比べるとNautilus804改造品は音の密度、質感、響き等々かなり優れています。マトリクス構造+曲面箱で中低域の余分な響きが抑えられ大変自然な音で、低域〜高域までハイスピードで迫ってきます。各ユニットの位相も合っているようで縦に音像がピシッと並びます。

一通り試聴が終わりトーンバースト波で過渡特性を測りましたがネットワーク改造前と大差ありません、相違点が見つかるかと期待しましたが残念です。周波数特性も測りましたがエージングが進み低域が少し延びていました。

次は各ユニットのインピーダンス特性を測りfoインピーダンス補正(foの山を潰す)を実施します。箱が小さいので大きなコイルを何処に取りつけるか悩ましいところです。

■MID〜TWのfoインピーダンス補正
各ユニットのインピーダンスを測りインピーダンス補正をExcelでシミュレーションしました。インピーダンス補正回路はL+C+Rで構成した一般的なものです。
CDM7NTと同様にNautilus804も最低インピーダンスが3〜5Ω、アンプには辛い値です。シミュレーション結果よりLを大きくすると補正共振回路のQが大きいことが分かります、Qが大きいとfoの山の部分のみ上手く潰すことができます。

 

補正回路はMIDバックキャビティに組み込むことにしましたが、充分なスペースが無く大きなLを組み込めません。MID用のL≒20mHはネットワーク改造で不要となったNautilus804のLを流用しました。コイルを解きφ0.6oのエナメル線を300回位巻いていますが直流抵抗が2Ω強、補正Rから2Ωを差し引いています。TW用のL≒2.5oHはフェライトコアに巻かれた市販品です。
また発振器+ミリバルで所定の周波数で共振しているかを確認しています。LCが共振するとミリバルの値が小さくなります。

foインピーダンス補正を施すとネットワークのローカット部分の状態が変わる可能性があり、ネットワーク定数の微調整が必要かもしれません。

■音は!
先ずはチェック用のチェンバロCDを聴きます、中〜高域の騒がしさが無くなり弦の倍音が良く分かります、ピンと張った弦の感じが大変良いです。ピアノも鋼製フレームの響きが伝わってくるようです。クラッシックものは弦楽含めコンサートで聴くような柔らかくて芯のある音が聞こえてきました、感激です。
JAZZも同様に騒がしさがありません、音量を下げても音の通りが大変良くボーカルものも以前に増して細かな喉使いが分かります。
聞こえ方を纏めると「騒がしさが無くなる=静か」、「響きが良く分かる」、「質感の向上」等々、また迫力が増しました。Nautilus804本来の箱共鳴による色付けが無い+質感の向上で生の音に近くなったようです。
fo補正用のLは巨大なものでなくても充分に効果が得られることが分かりました。次はWのfo山潰しですがバスレフなので山が2つ、悩ましいです。

■録音マイクの位置
クラッシックでは良くホールトーンの話題が上がります。スケール感は別にしてホールで聞く音と自宅で聞く音は何か異なるようで色々と考えていました。雑誌を調べるとホール録音はステージ近傍に録音マイクを立てているようです。ワンポイント録音もありますが通常は楽器の音を拾うマイク、雰囲気(ホールトーン)を拾うマイクを使っています。更にマイクは高い位置にあったりします。つまり聴衆が位置することができない場所にマイクをセッティングしています。ということはホールの椅子に座って聞く音〜残響と録音されたものは異なっているようです。クラッシックと言えども仮想音像(音源)を聞いている?。オーケストラもスタジオ録音を行ったりしています、良い音は録音できると思いますが大切な雰囲気が欠落?。クラッシックCDはライナーノートで録音場所を確認して聞くと納得しそうです。

色々とCDを聞いて違和感を感じていたところ、ロマネスク牧原さんより以下の貴重なコメントを頂きました、有難うございます。

< 牧原さんのコメント(憶測も含みますとのこと) >
1.マルチマイク(クラシックも含む)を使用し音の抜ける処にまたマイクを入れるので、不用意な音抜けは無いと思われる。
2.スタジオやホールで暗騒音があるとスピーカーやアンプ等(ミキサー・録音機器のAD/DAコンバーター電源)が悪いために混変調を起こすので、約30Hz〜50Hz以下は切っている。
3.録音時のマイクロフォンの位置は再生装置を意識してオンマイクで撮るので空間合成した音ではなく、出る音のタイミングが会わず音の消え方が不自然になる。
特にオーケストラはメインマイクが指揮者の後方の上方空間にあるので、弦楽器は丁度楽器の正面にマイクがきてしまう。そのため楽器のキツイ音をモロに拾い演奏会場の客席で聞く音とは大きく異なりる。ティンパニーの音もモロに拾うので大変キツイ。
4.録音後にテイクを繋いだり音量を加減してミキサー(デジタル)を通してダビングするのでジッターが増え歪みも増える。

牧原さんのコメントに納得です、感じている違和感を纏めると
・楽器の音像が貼り絵の様に貼られ音像間の繋がりを感じない
・バイオリンは目の前&ホールで聞く音と異なる、キツイ音が聞こえる、変な艶が乗っている
・コンサート会場で感じる雰囲気が欠落、音の消え入る様子が異なる
・曲の出だし〜演奏中の楽器の出だしが微妙に合わない

牧原さんが長年生録され録音機材の改良(電源強化等)を実施されるのが良く分かりました。違和感を意識すると音楽が楽しく聞くことができない、難しいところです。

■Wのfoインピーダンス補正
バスレフ箱なのでfoの山が2つあります。各々の山を潰す補正回路を組むと良いのですが、箱が小さくLが内臓できそうにありません。試しに1つの補正回路で2つの山を潰すことにしました。Excelシミュレーションで確認するとfo:17Ωが7Ωまで下がります。Lは手作りアンプの会・豊蔵さんより頂いたトリテック製3D用コイル(22.5mH)を使いました。Lは下側Wのバックキャビティに収めています。

 

■音は!
低域がギュッと締まります、量感は減りますがスピード感がW〜MID〜TWと揃った感じです。ハイスピードで音が迫ります、CD録音によってはカミソリで切ったような雰囲気も感じます。益々CD録音の悪いところが目立つようですが、新旧問わず録音状態の良いもの、加工が少ないものは柔らかく心地良く響きます。
チェンバロの特定の弦にチン、チンと変な倍音が乗っています、弦が何処かに触っているのか引っかく際の音なのか良く分かりません。殆どのチェンバロ録音で同様の音が聞こえてきます。また鍵盤を操作するとゴソゴソと低い音が聞こえます、PC・FFTで見ると20Hzまで略フラットに音が入っています。
ネットワークを改造後はバッハばかり聴いています、器楽〜声楽、心が和みます。
JAZZのブルーノート録音は演出過多ですが、意外と自然な雰囲気です。


一通り改造が終わりましたが、スピーカのエージングも進んでいるのが分かります。後は気長にチューニングです。

今回も牧原さん、西原さん、豊蔵さんには大変お世話になりました、有難うございます。

2001.12.18 着手 t.shiroyama、以下update

2001.12.23、12.31
2002.1.2、1.13、1.15、1.23、2.9