伊能忠敬『測量日記』

八月二十六日

　朝は曇り。四っ後（午前10時過ぎ）から晴れ。八っ時（午後2時）は曇りで小雨。同所に逗留して測る。六っ半時（午前7時頃）に出立した。

　大黒町の裏。昨日打ち止めた大印より初めて、沿海を順に測る。大黒町裏。唐船掛場。左に肥後屋敷。佐賀屋敷。横に一間三尺（2.73m）。大黒町上り場、平戸屋敷の石垣の角に先日残したツ印に繋げる。

　平戸屋敷。横に二十四町五尺（2,619.70m。ここは計算が合わなくなるので、六町九間（670.91m）の誤りでは？）。大黒町の新橋の右柱に先日残したレ印に繋げる。

　左は柳川屋敷。筑前屋敷。浦五島町裏。左に深堀屋敷。浦五島町より引き出したヨ印に繋げる。

　左に諫早屋敷。樺島町。中ノ波戸のヒ印に繋げる。

　大波戸。横に一十七間二尺（31.52m）。制札の右柱のワ印に繋げる。碇屋長左衛門宅で昼休み。

　諏訪大明神の御旅所。この節は祭礼（おくんち。諏訪神社から大波止に仮設された御旅所まで神輿を移し、三日間市中は賑わう。現在は新暦の十月九日におこなわれる）前なので新たに造る。この所に大筒玉（現在は元船町にある。長崎人はテッポンタマと呼ぶ。、これは島原の乱の時に製造されたといわれている）がある。目方が千斤という。江戸町の出島阿蘭陀屋敷入り口。石橋の手前に残した八印に繋げる。沿海一十一町八間（1,214.55m）。

　これより出島阿蘭陀屋敷を左にして回る。阿蘭陀屋敷水門前。内外が封印されている。石橋の右柱の八印に繋げる。出島一周は五町四十四間（625.45m）。

　西築町の対州屋敷（対馬藩屋敷）。二股川尻（中島川）に十印を残す。

　横物で川添いに打ち上がる。左に俵物役所。東築町の長久橋手前向かい右柱の六印に繋げる。横物は一町四間（116.36m）。

　又、十印より初めて沿海を測る。二股川尻（中島川）二十九間（52.73m）。中央が界。江戸町。川を引き渡って直ぐに先日残したテ印に繋げる。

　沿海を打ち止めて、三町二十四間一尺（371.21m）。沿海合計で一十四町三十二間一尺（1,585.76m）。横物合計で七町三十一間五尺（821.52m）。総測二十二町四間（2,407.27m）。

　八っ半時（午後3時）に宿へ帰る。