○選炭設備周辺
*本HPの写真・図版等の転載・転用等を固く禁止します。
<村里 榮 氏撮影> 写真左側中段にある丸い設備がドルシックナーです。「三菱鉱業株式会社高島礦業所概況案内(昭和40年4月)」にある「端島礦坑外概況」の
「選炭設備の概要と処理能力(昭和39年3月)」の表では、「ドルシックナー」は「微粉回収設備」として「20m径」との記載があります。ちなみに、「三菱鉱業セメント(株)総務部社史編纂室、『三菱鉱業社史』、三菱鉱業セメント(株)、昭和51年、767・768頁」にある、微粉回収の説明の中には「微粉回収の前処理としてのスラリーの濃縮は,戦前は沈殿池のほかにセットリングコーンが多く用いられたが,戦後は大部分がドル型シックナーになり,シックナーの径も次第に大きくなって」の記載があります。
また、島の先輩によりますと、写真右部には、選炭設備バウムジグ水洗機があるとのことです。
<村里 榮 氏撮影>
この機械も上段写真の右側に位置する機械でが、日々、ガタガタと大きな音を出して稼働しておりました。島の先輩に伺いますと、この機械の名称は、ローヘッドスクリーンとのことでした。
表105 大正14年における三菱鉱業関係選炭工場の概況 |
炭砿名 | 年間生産量 (t) | 選炭工場数 | 選炭方式 | 主な選炭設備 (処理能力×台数) |
高 島 | 318,363 | 2(二子坑,端島坑) | 手選 | |
※「三菱鉱業セメント(株)総務部社史編纂室、『三菱鉱業社史』、三菱鉱業セメント(株)、昭和51年、761頁」の高島炭砿部分より
※『三菱鉱業社史』の表では、美唄、芦別、高島の選炭方式は「手選」で主な選炭設備の欄は空白となっていますが、それ以外の炭砿では選炭方式が「手選・水選」で主な選炭設備の欄は各種設備が記載されています。 |
左の表の説明として、<三菱鉱業セメント(株)総務部社史編纂室、『三菱鉱業社史』、三菱鉱業セメント(株)、昭和51年、759・760頁>には、「表105は大正14年における三菱鉱業および同社に関係の深い炭坑の選炭工場の設備概要を示したものである。筑豊の各炭坑が各種の水選機を設置して原炭の品位低下をカバーしているのに対し,美唄,芦別,高島では原炭が良かったために手選のみを行い,水選を行っていなかったことは興味深いことである。」との記載があります。
「三菱高島礦業所 端島坑概要 (昭和12年10月)」の選炭設備の項には、「選炭機は1時間能力160瓲にしてサイジングにはローラースクリーンを水洗機はバーム式60瓲主洗機及30瓲再洗機を設備す。
出炭は良炭及粗炭に検別し良炭の20m/m以下及粗炭の8m/m以下は夫々其儘製品とし40m/m以上は手選をなし其中間のものを水洗す。
水洗微粉炭はベッヘル沈殿池及
コニカルタンクにて完全なる回収に努め更にジンマー及オイルフローテーションにて品質の向上を期す。」との記載があります。
選炭工場概況(昭和37年度) |
生産量(実績t/年) | 精炭 | 289,900 |
格外雑炭 | 2,920 |
計 | 292,820 |
公称能力(t/h) | 100 |
選炭主要設備 | 粗選 | 手選 (30t/h×1) |
主選 | バウムジグ (100t/h×1) |
再選 | なし |
微粉 | 回収 | シックナー,浮選(FW) |
脱水 | オリバーフィルター(5t/h×2) |
「三菱鉱業セメント(株)総務部社史編纂室、『三菱鉱業社史』、三菱鉱業セメント(株)、昭和51年、762・763頁」の端島部分より |
左の表は選炭工場概況(昭和37年度)で、下の表は昭和39年3月に新設された選炭設備の概要と処理能力です。
なお、オリバーフィルターですが左の表と右の表にて同じ数値となっていますので、下記の表の全ての項目が更新・新設されたのではないのかもしれません。
選炭設備の概要と処理能力(昭和39年3月) |
ポケット容量 | 原炭ポケット | 250m3 |
水洗原炭ポケット | 800m3 |
主要選炭機 | バウム水洗機 | 150T/H |
微粉回収設備 | ドルシツクナー | 20m径 |
浮選機(FW24型) | 16区 |
脱水機(オリバーフィルター) | 5T/H×2基 |
「三菱鉱業株式会社高島礦業所概況案内(昭和40年4月)」の端島礦坑外概況より |
島の先輩にお聞きしましたところ、島の最後の頃に完成したドルシックナーでは、ドルシックナーの底から濃縮された液を抜き出してポンプにてオリバーフィルターまで送り、オリバーフィルターでは濃縮液から炭を取り出して貯炭場に落として、一般炭とは別に販売していたそうです。なお、浮選機ですが、ドルシックナーが完成してからは使用されてなく、その後、その場所は炭務の食堂として使用されていたとのことでした。また、選炭に要する水は総て海水で、最後は海に放流していたそうです。
ちなみに、高島でのシックナーの状況ですが、<『三菱高島砿業所 百年のあゆみ』、三菱石炭鉱業株式会社高島砿業所、昭和56年4月>の「図-6 選炭系統図」には、浄化シックナ(30Mφ×1 1780㎥)や廃水シックナ(25Mφ×2 30Mφ×1)の記載があります。