2004 9 BRUNAI

ブルネイ3日目は、ツアーでウル・テンブロン(Temburong)国立公園に向かう。

ボルネオ島の原生熱帯雨林を回るツアー。
もちろん熱帯雨林へ行くのは、生まれて初めてだ。

この船で、ウル・テンブロン国立公園の入り口にある街まで行くのだが、あまりに貧弱な船なので、少し驚いた。
かなり揺れそうなので、念のため、酔い止めの薬を飲むことにした。

案の定、船は揺れた。
かなり揺れた。

同乗した客が、船酔いでぐったりしている。
薬を飲んでいて良かった。

船は、マングローブの森をすり抜けるように進む。
川は蛇行し、果てしなく続いている。

途中で、同じ型の船が沈みかけて、救助を待っていた。
川は、かなり深いようだ。
この船も沈まない保証はない。
ライフジャケットも着ていない。
泳げないし、沈んだらどうなるのか。
この川には、危険な生き物が棲んでいないのか。
いろんな不安が頭をよぎった。


ようやく、船は無事に港へ着いた。
小さな港町だが、たくさんの人で賑わっていた。

港からツアー用のジープに乗り換え、ビジターセンターへ向かう。
ツアーは、我々以外にナショナルジオグラフィックのスタッフだというドイツ人の男女が参加していた。
ガイドさんは若い男の子で、ウル・テンブロン国立公園を案内するのは、今回が初めての様子。
ガイドというよりは、同じツアー客という感じだった。

ウェルカムティー。
前日のカンポン・アイールで食べたようなお菓子が出てきた。

ウェルカムティーの後、ライフジャケットを付けて、いよいよ出発。テムアイというロングボートに乗り、熱帯雨林の中へ向かう。
船の一番前は、なぜかガイドの男の子。
一番、楽しそうにしている。

ロングボートは木製で、幅が狭い。
蛇行した川の流れは速くて荒い。
ロングボートの速度もぐんぐん上がる。
しっかり掴まっていないと、振られて落ちそうだ。
この船を操縦するのは、現地ガイドの男性。
この辺りの原住部族の出身だそうだ。
身体は小さいが、鍛えられた肉体が実に頼もしい。

ふと視線を上に向けると、頭上には、見たことがない青い空が広がっていた。
沖縄で見た空よりも青々している。
日本では見ることが出来ない、まさしく南国の空だ。
とても清々しい澄んだ空であった。

ウル・テンブロン国立公園の目玉施設に向かうため、いったん上陸した。

改めて、上から川に浮かぶロングボートを見ると、よくこんな船で、ここまで来たものだと思った。
何でも思い切ってやるものである。
思い切って行動した末でないと、感動は得られないものだ。

熱帯雨林の中に作られた通路を、どんどん進む。
整備された森のようで、珍しい植物には説明板が付いている。特に珍しい植物や昆虫がいたら、現地ガイドさんが説明をしてくれた。

ボルネオ島の熱帯雨林にだけ住むというテングザルを見ることが出来るというのが、このツアー最大の売りであったが、残念ながら見ることが出来なかった。

しかし、ドイツ人女性は気配を感じたと言っていた。
きっと、何か感じたのだろう。

しばらく進むと、巨大な施設が見えてきた。
ウル・テンブロン国立公園の目玉施設であるキャノピーだ。
この頂上から熱帯雨林を見渡そうというのである。


キャノピーの高さは、約50m。
階段を使って上がるのだが、かなりきつい。

高所恐怖症の人には、この施設は辛いかもしれない。
しかし、頂上からの景色は、まさしく絶景である。

果てしなく広がる熱帯雨林。
キャノピーに上がらないと、熱帯雨林の中を歩くだけでは、この広大さは分からない。

鳥の高い鳴き声が、熱帯雨林に響き渡る。
映画で見るようなジャングルの風景が、まさしく目の前に広がっている。
ここでしか出来ない、素晴らしい体験をすることが出来た。

このキャノピーを管理する人が、タバコを吸っていた。
ウル・テンブロン国立公園は、非常に整備されている。
研究所のほか、礼拝所や宿泊施設やキャンプ場などもある。
意外と、人間の手が入った熱帯雨林なのかもしれない。

再び、ロングボートに乗り、さらに奥地へ進む。
しばらくすると、川の支流に入り、ロングボートを降りて、歩いて川の中を進むことになった。
いったい何があるのだろうか。

途中、ドイツ人の男女が何か見つけて立ち止まった。
その際、私の腕にヒルがくっついた。
慌てて、ヒルを払ったものの、なかなか取れない。
やっとのことで取り払ったが、初めてのヒル体験で、すっかりテンションが下がってしまった。

不幸なことは続くもので、この後、川底の石で、足の裏を切ってしまった。
ジャングルの得体の知れないバイキンが傷口に入ってしまうのでは・・・、そう思うと、さっき下がったテンションが、更にどん底まで落ちてしまった。

その最低のテンションのまま、ようやく最終目的地である滝に着いた。
ガイドの若い男の子も現地ガイドの男性もドイツ人の男性も、何かに取りつかれたように滝を目指して走っていった。

もともと泳げないし、テンションが低かったこともあり、滝へは近づかなかった。
疲れていたのもあったが、ただぼんやりと滝を眺めていた。
木漏れ日の中に浮かぶ滝は、とても幻想的だった。

やがて、食事の時間となった。
カレーが出てきたが、疲れと低いテンションのため、あまり食欲が無かった。
現地ガイドの男性が、心配したのか声をかけてきた。
それが、またテンションを下げる原因となった。

旅行先で、テンションを下げるものではない。
せっかくの時間がもったいないものになってしまう。

帰りは、川を逆流するので、ロングボートの揺れは、さらに増して激しかった。しかし、この頃には、すっかりロングボートの揺れにも慣れて、揺れを楽しむほどになっていた。
こうして、波乱万丈のツアーも無事に終わった。
いろいろハプニングもあったが、ウル・テンブロン国立公園ツアーは、思い切って参加してよかった。
今後、このような経験をすることは、まずなかろう。
若いうちに、体験すべきツアーである。

夕方前には、首都バンダル・スリ・ブガワンに戻ってきた。
到着後、すぐに薬局へ。
消毒液を足の裏に塗り、ようやくテンションも元に戻った。

今夜の宿は、七つ星とも言われるエンパイアホテル。
早速、ホテルがあるジュルドン地区へタクシーで移動した。

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